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 応用行動分析学勉強ノート

 応用行動分析学(ABA)を学ぶメリット


  発達障害のあるこどもの保護者や専門家が応用行動分析学(ABA)を学ぶメリットを考えていきます。

  1点目は,発達障害のある人の行動を理解する手助けとなる点です。発達障害のある人は様々な行動を示します。周りのこども達があまり示さないような行動(常同行動やこだわりなど)や困った行動(自傷,他害,自己刺激行動など)があります。その行動の原因や理由が理解できなければ,保護者や支援者は混乱してしまうでしょう。こどものことを大切に思って日々子育てや支援を行っていても,誤った対応をしてしまう可能性もあります。『自閉症やADHDだからこういった問題行動を示す』,『自分に指導力がないから問題行動を起こさせてしまう』といった個人攻撃の罠に陥ってしまうかもしれません(『行動の原因を環境に求めることのメリット』参照)。

  その時,『行動の見方』や『なぜ発達障害のある人たちに問題行動がみられやすいのか』が理解できていれば,ABCの三項随伴性により,こどもが示す理解し難い行動の理由や原因を推測することができます。こどもの行動の理由や原因が理解できれば,具体的な対応方法を考えることができます。こどもと前向きに関わっていくための助けとなるでしょう。

  2点目は,応用行動分析学(ABA)を学び,適切な行動を増やして不適切な行動を強めないような日々の関りを通して,強度な問題行動やわがまま行動を予防できる点です。問題行動が非常に強くなったり,こどもが大きくなって力が強くなっても継続していれば,対応は困難となり,本人や家族の生活の幅は狭まってしまいます。小さいときから問題行動を強めない関わりをすることが大切です。

  3点目は,日々の関わりや教育的支援を通してこどものできることを増やすことができる点です。適切な行動が増えてくると問題行動は減少し,こどもが楽しめることも増えていき笑顔も増えていくでしょう。活動の幅も拡がりQOLの向上につながり,社会的学習の機会も増えていきます。

  4点目は,問題行動に巻き込まれない(巻き込まれにくくなる)という点です。こどもが示す問題行動に周囲が巻き込まれ,心身共に疲弊してしまっている状況があります。応用行動分析学の基本である三項随伴性の枠組みで行動を捉えることによって,こどもの行動,自身の行動を客観的に捉えやすくなります。一歩引いて状況を捉えることで,問題行動に巻き込まれるという大きなストレスを和らげることができます。

  こどもの行動が理解できず,上手く成長させてあげられているという実感が持てなければ,保護者は子育てに強いストレスを抱え,無力感を感じるかもしれません。応用行動分析学を学ぶことにより,こどもの行動を理解することができ,問題行動を改善するための手立てを考え,こどもの良い行動を伸ばし成長を促すような関わり方ができれば,発達障害のあるこどもの子育てに関するストレスが低減し保護者も前向きになると思います。先生や支援者も同様でしょう。

  個別の療育や専門的な訓練は大切ですが,同様に大切なことは保護者や先生方との日々の関わりです。こどもは限られた勉強場面だけで学習しているわけではありません。日々の保護者や兄弟や先生との関わり,同年代のこどもたちとの関わり,遊び,食事,買い物や電車に乗るといった日常生活の中で多くのことを経験し,社会的な学習をしていきます。毎日起きてから寝るまでと考えると,特別な学習場面よりも時間が長く,学習の機会はたくさん存在します(また,学習の機会がたくさん存在するようにしてあげることができます)。

  学習の機会があるということは,良い行動も悪い行動も学習する機会があると考えられます。例えば,不適切な行動で要求が通ったり,言葉を用いる必要がないような生活を送っていると,不適切な行動が増えていき,適切な行動が形成されません。つまり,なぜ特定の行動が形成されるのか,または,形成されないのかという応用行動分析学の知識があれば,日々の生活でこどもの適切な行動を増やしていくような教育的な関わりができるということです。

  発達支援を行う専門家が応用行動分析学(ABA)を学ぶメリットもたくさんあります。

  上記のような行動の理解の仕方と日々の適切な関わり方を保護者や関連領域で働く人たちにアドバイスできるという点はもちろんですが,様々な介入技法やマニュアルのメカニズム,根底にある行動理論が理解できると応用が可能になります。専門家である以上,ただ特定のアプローチをマニュアルに沿って実施できるだけではいけません。それは専門家でなくてもマニュアルが読める人なら誰でもできます。また,行動の記録方法や一事例実験デザインを学ぶことにより,自身の臨床行為,実践活動を客観的に振り返り,効果を検討することができます。

  例えば,応用行動分析学(ABA)をベースとしたアプローチの1つであるPECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)を例に挙げると,PECSにはしっかりしたマニュアルがあり,関連書籍も出版されています。そのようなマニュアルに沿って実施すると,誰でもある程度適切に実施することができます。しかし,そのベースとなっている行動理論を知らなければ,上手くいかない場合の応用ができず,こどもや家族の生活に合わせて優先順位を立てたりマニュアルに載っていないような修正を行うことは難しいでしょう。

  また,行動の記録の仕方や実験デザインを知らなければ,どの程度支援に効果があったのか,支援方法を少し修正したり追加した時にどのような変化が見られたのかを客観的に評価することができません(主観的な評価には危険が伴います)。支援の効果を客観的に評価できれば,今の支援が正しいのか,どのような修正が必要なのかを検討することができます。また,自分が専門としていない支援技法の効果やメカニズムを検討することも可能となります。

  このように,発達障害のある人の保護者や関わる人たちそれぞれの立場で,それぞれ応用行動分析学(ABA)を学ぶメリットはたくさんあります。応用行動分析学の基本となる考え方は単純で明快なので,きっと日々の生活や臨床活動に役立つ所はあると思います。


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