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 多動や衝動性をコントロールする力を養う

 行動の結果を頻繁に明確に示す


  応用行動分析学(ABA)では三項随伴性の枠組みで行動を捉えます。どういう状況(先行条件A),どのような行動が起こり(B),どういう結果を得るのか(結果C)。そして,ポジティブな結果が伴う行動は増加し(強化),ネガティブな結果が伴う行動は減少すると考えます(弱化,罰)。詳細は『行動の見方:三項随伴性』,『強化,弱化(罰)』参照。


  【頻繁に明確にフィードバックする】

  抑制する力が弱いこどもは,ネガティブな結果につながるであろう不適切な行動を衝動的に行ってしまうことがあります。同じことをして怒られた経験があっても,物を壊したり,投げたり,プリントを破ったり,叩いたり,落書きをしたり,走り出したり,大きな声を出したりすることがあります。家族や先生は褒めたり,怒ったり,説明したりしても行動が中々変わらないため,自身の対応(行動の結果)では,こどもの行動が変わらないのではないかと思ってしまうことがあると思います。

  しかし、行動の結果を明確に頻繁に示すことによって,徐々に自身の行動をコントロールする力がついてきます。時間が掛かっても根気強く,頻繁に,明確に結果を示していくことが大切です。

  まずは,大人側のスキルアップの目的も兼ねて,頻繁にこどものその時点の行動をフィードバックすることから始めてみましょう。その時点のこどもの行動が良いか良くないかのフィードバックを行います。例えば1時間に3-4回などと数を決めて,フィードバックを行ってみてください。

  そうすると,最終的な結果のフィードバックだけではなく,活動や課題の過程(取り組み方など)へのフィードバックが必要になります。良い行動のフィードバックとしては,「きちんと座ってお勉強できてるね」,「鉛筆きれいに持ててるよ」,「今静かにできてたよ」,「半分終わったよ,もう少し頑張って」,「しっかり食べてるね」,など。

  こどもが普通に過ごしているとき,落ち着いて行動できているときにフィードバックをする必要もあります。すごく褒めてあげなくても良いので,「しずかにテレビ見てますね」,「ゆっくり歩いてくれてお母さんうれしいわ」などと笑顔で言ってあげて下さい。たまに大げさに褒めてあげたり,買い物中ならアイスを買ってあげたりすると良いと思います。普通に過ごせていることに注目する視点はとても大切です(他行動分化強化)。

  良くない行動のフィードバックに関しては,前提として叱責する必要はありません。衝動性からくる問題行動や逸脱行動はこどもに悪気はなく,100%こどもは悪くないので,叱るのではなく教育的に教えてあげる必要があります。できるだけ具体的な行動で何が良くないのか,どうすれば良いのかをフィードバックしていきます。

  「少し足がばたばたしてるよ,ぺたっと床につけて下さい」,「急いで書くから字が雑になってるよ,ゆっくり書いたらもっときれいに書けるよ」,「強くドアを閉めたら冷蔵庫が壊れちゃうからやさしく閉めてね」,「大きな声を出したらみんな驚くよ,電車の中はもう少し静かにね」,「走ったら危ないからお母さんと手をつないでね」,など。「何でそんなことするの!」,「まじめにやりなさい!」といった漠然とした注意ではなく,どのような行動が良くないのか具体的にフィードバックして,望ましい行動を根気強く教えてあげましょう。

  良い行動の場合は笑顔で,良くない行動の場合は表情を変えず,その時点の行動をフィードバックします。繰り返し自身の行動へのフィードバックを受けることで,こどもはセルフモニタリングの力が養われます。

  セルフモニタリングの力が向上し,良い行動,良くない行動を理解することができる様になっても,良くない行動を衝動的に行ってしまうでしょう。『分かっていてもできない』というところが衝動性が強いこども達の大変なところです。こども自身が落ち着いてから反省したり,落ち込んだりすることもあると思います。そのため,時間をかけて以下の様にこどもの行動と結果を繰り返し分かりやすく示し,行動を制御する力(セルフコントロール)を養ってきます。


  【行動の結果を頻繁に明確に示す】

  こどもが衝動性を抑えて行動をコントローする力を養うために,行動の結果を頻繁に明確に示していきます。良い行動であれば保護者の笑顔やポジティブな声かけが強化子となります。トークンを用いても良いでしょう。良くない行動であれば,強化しない結果(消去),弱める結果(弱化)を伴わせていきます。

  こどもが衝動的に不適切な行動を行った時は,冷静に落ち着いて対応するように心がけます。こどものテンションに合わせてこちらが過度に反応すると,不適切な行動を強化してしまうことがあります。何か悪いことをしたとしても大きく声を荒げて叱責する必要はありません。こどものテンションが上がった時こそ,周囲は冷静に淡々と対応します。何か課題や活動を行っている場面であれば,最後まで行ってもらいます。

  良くない行動の弱化という点では,対応の1つとして良くない行動を具体的にフィードバックして修正を行います(やり直してもらう)。衝動的に物を投げてしまったら,「鉛筆を投げるのは良くないことだから拾ってください」と声をかけて拾わせる,落書きをしたら,「壁に書くのは良くないですよ,消してください」と言って全て消させるなど,結果として不適切な行動を行ってしまった責任を取らせます。これはこどもが嫌がって時間がかかったとしても,しっかりと対応しなければいけません。衝動的に良くない行動をしてしまったら,めんどくさい結果が待っていることを経験してもらいます。

  もう少し衝動的な行動の結果としてこどもに負荷をかけるなら,きっちりと最初からやり直させます。例えば,外出時に走り出してしまったら元の場所まで戻って歩き直したり,プリントに落書きをしてしまったら全部消して最初からやり直すなど。大半のこどもはやり直させられることを嫌がると思います。衝動的な不適切な行動に対して負荷のかかるネガティブな結果を伴わせるということです。

  衝動的な問題行動は100%こどもが悪くありませんが,抑える力を養うための教育的な支援として,問題行動が起こらないように十分に配慮し,普通の行動や望ましい行動を明確に頻繁に強化し,それでも問題行動が生じた場合は,少しめんどくさい結果,負荷のかかる結果が伴う経験をしてもらいます。衝動性が強く,問題行動が頻繁な場合は,ネガティブな結果にあふれた日常となってしまうことがあります。ある程度今は仕方がないとスルーしたり,指摘する基準を緩くしたり,フィードバックだけに留めるなど工夫してもよいでしょう。全ての問題に真正面からぶつかっていく必要はありません。

  不適切な行動にしっかりと対処する必要がある場合は,それ以上にこどもが普通に過ごしている場面に注目し,ポジティブな対応やフィードバックを増やすように心がけてください。


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