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 軽度知的障害やその他の発達障害のあるこどもの支援

 
ルールを守ることと衝動性

  ルールを決めて守ることの大切さを解説してきましたが,ADHDや知的障害がある人の場合,正しい行動が分かっていても衝動的に問題行動を行ってしまうことがあります。

  『人を叩いたらいけない』というルールが分かっているけど,からかわれたら手を出してしまう,『授業中に席を離れたらいけない』ことを分かっていても離席をしてしまう,というものです。

  正しい行動するスキルがあり,やらないといけないと分かっているけれど,できないという場合,主に抑制する力の弱さ(衝動性)が関係しています。その他,動機づけ,適切なスキルが無理なくできるほど定着していない(流暢性),状況理解の弱さ,行動の結果を具体的にイメージする力の弱さ,などが関係していることがあります。

  このような場合,「○○しなくてはいけない」,「△△してはいけない」というルールを2-3回言い,こどもが「分かった」というだけでは不十分です。こどもが「分かった」と言った後にルールを破ったり,問題行動を行ったりしてしまうと,「分かったって言ったでしょ!」と怒りがわいたり,『なぜ分かっているのにするのだろう?』と悲しくなると思います。

  
『知識として分かっている』、『知識として分かっていてスキルもある』ということと,『実際に行動できる』ということは違います。また,知識として理解している程度(どの程度ルールを実感しているか)やスキルが定着している程度(どの程度無理なく実行できるか)ということも関係します。『SST』の頁でも解説しましたが,正しい社会的行動やルールを指導する場合,まず知識を学び,モデリングやロールプレイ通してその行動を実行し,習慣となるまで練習する必要があります。そして衝動性の強さなどのために正しい行動が知識として分かっていても実行できないこどもの場合は,そうでないこどもよりも正しい行動を繰り返し教え,実行できたことを強化し(褒めたり認めたりなど),無理なく行動できるようになるまで練習を重ねなければなりません。正しい行動の知識や実行が衝動性を上回るまで,教育的な支援を行う必要があります。

  まず,正しい行動やルールを繰り返し知識として教えます。これは,こどもが「分かった」と言ったとしても,しっかり実行されるまで繰り返します。学校に行く前や夕食後などに毎日確認しても良いです。『絶対に人は叩かない』,『授業中は席を立たない』などを紙に書くなどして毎日確認します。そして,様々な場面を想定し,どのように行動したら良いかを教えていきます。『絶対に人は叩かない』というルールであれば,友達にからかわれたとき,物を壊されたとき,肩がぶつかったとき,にらまれたとき,叩かれたとき,イライラしたとき,などに具体的にどうしたら良いかを教えていきます。

  その際,正しい行動を行った時のポジティブな結果,正しい行動を行わなかった時のネガティブな結果も合わせて繰り返し伝えます。1週間のうち○日頑張ったら家族で公園に遊びに行くけれど,ルールが守られなかったらいけません,など。中学生や高校生,成人になり,理解力が高まってきたら社会的なネガティブな結果を伝えることもあります。人を叩いたら学校を退学になる,警察に捕まる,仕事を辞めなければいけなくなる,など。

  そして,ルール通りに結果を提示し,正しい行動を積極的に頻繁に強化します。また,できるだけ頻繁に褒めるたり,認めるたりできるようなルールを作成します。例えばご家庭では,毎晩その日ルールを守ることができたかを確認し,チェックシートに○を付け,「よくがんばったね」,「その調子」,「お父さんは嬉しいよ」と褒めてあげます。授業中の離席行動を対象としている場合は,その児童が離席せず座ることができていたら担任の先生は10分に1回微笑みかけたり,肩をポンポンと叩いてあげたりして正しい行動を頻繁に強化します。これは徐々に15分に1回,30分に1回と間隔を伸ばしていけば良いので,まずは可能な限り頻繁に正しい行動を強化します。トークンエコノミーを用いることも有効です。一日ルールを守ることができたら教頭先生にハンコを貰うなど,こどもが喜ぶことを考えていきます。

  このようにADHDに関係する衝動性の高さなどのために,分かっているけれども衝動的に問題行動を示してしまうこどもの場合,「なぜ分かっているのにできないの!」と叱責したり,「もうこの子は何を言っても聞かない」と諦めてしまってはいけません。分かっているはずなのに正しい行動を行わないと,性格に問題があったり,わざと困らすような行動を行なっている様に感じるかもしれませんが,決してそんなことはありません。こどもは保護者や教師を困らせようと思って,問題行動を示すわけではありません。衝動性や知識不足,スキル不足,認知機能の弱さ,周りの誤った対応や反応のために,自分でもコントロールできずに問題行動を行ってしまっていることが多いです。

  自身の行動をコントロールできるようになるまで,繰り返し繰り返し,根気強く望ましい行動を指導し,強化する必要があります。正しい行動が定着するまで時間がかかることがありますが,衝動的な行動を抑えて行動できるようになることはたくさんあるので,スモールステップで根気強く取り組んでいきましょう。



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